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NeuCyte社と同社の技術・製品

2020年10月5日
本コーナーでは、アズワン(株)が取扱っている商品について、コンセプトや技術的な背景を中心に、できるだけ 分かり易く説明したいと考えています。第3回は、NeuCyte社のSynFire Co-Culture Kit を紹介します。

    NeuCyte社はどんな会社ですか?

  • NeuCyte社は2016年の設立で、米国カリフォルニア州サニーベールにあります。スタンフォード大学医学部のThomas Sudhof 教授、Marius Wernig 教授の研究室で開発された、ヒトiPS細胞を神経細胞に直接変換する技術(ダイレクトリプログラミング技術、特許出願中)を基に、創薬支援ツール(商標:SynFire)や同ツールを用いたサービスを提供しています。
  • Sudhof教授は、2013年に小胞輸送の研究でノーベル生理学・医学賞を受賞しています。同社のCo-Founder及びScientific Advisory Board議長です。

SynFire Co-Culture Kitはどのようなものですか?

  • ヒトiPS細胞から調製した2種の神経細胞(グルタミン酸作動性ニューロン、GABA作動性ニューロン)とアストログリア細胞の共培養を行うキットです。ダイレクトリプログラミング技術を用いることで、iPS細胞から約1週間で均一なニューロン細胞が調製できています。アストログリア細胞は、ヒト脳の初代細胞を培養し調製しています。
  • グルタミン酸作動性ニューロンは、興奮性ニューロンで、シナプスにて脱分極を起こし活動電位を発生します。GABA作動性ニューロンは、抑制性ニューロンで、シナプスにて過分極を起こし活動電位の発生を抑制します。アストログリア細胞は、活動電位には関係せず、両ニューロンに栄養を与え、その働きを助けます。
  • 3種の細胞を共培養した細胞集団は、シナプスを形成し、ニューラルネットワーク(神経回路網)モデルプラットフォームとして、創薬、前臨床試験での神経毒性・安全性評価や、環境物質の神経毒性試験に利用できます。

ダイレクトリプログラミング技術とは具体的にはどのような方法ですか?

  • ヒトiPS細胞からのダイレクトリプログラミング技術によるグルタミン酸作動性ニューロン、GABA作動性ニューロン調製の詳細は明らかにされていません。商品説明書では、二つの論文(Neuron 2013年、Nat. Methods 2017年)が紹介されており、これを参考にして調製されているとのことです。
  • 前者の論文にはグルタミン酸作動性ニューロン、後者の論文にはGABA作動性ニューロンの調製方法について簡単に記載されています。論文では、グルタミン酸作動性ニューロンは、転写因子Neurod1またはNgn2、GABA作動性ニューロンは転写因子Ascl1とdlx2の遺伝子をヒトiPS細胞に導入し、発現させることにより調製されています。
  • ダイレクトリプログラミング技術により調製したグルタミン酸作動性ニューロン及びGABA作動性ニューロンは、免疫染色やパッチクランプ試験によりヒトの初代培養ニューロンとほぼ同じ形態や電気生理学的機能を有することが確認できています。
  • ヒトiPS細胞の利用について京都大学特許の使用権は得ていますか?

    • ヒトiPS細胞の調製に関する京都大学特許について、同社は2017年2月にiPSアカデミアジャパンとリサーチツール分野で利用するための非独占的なライセンス契約を締結しています。NeuCyte社は、中枢神経系における創薬、前臨床試験における神経毒性・安全性評価の研究でのiPS細胞由来細胞や関連サービス事業の実施が可能となっています。

    SynFire Co-Culture Kitの有用性や特徴は何ですか?

    • 中枢神経系(CNS)に関わる医薬品開発では、ヒト臨床試験でドロップする割合が34%と非常に高く、医薬品開発の大きな課題となっています。SynFire Co-Culture Kitは、動物を用いた前臨床試験を補完する手段として、臨床試験でドロップする医薬品開発の割合を下げることが期待できます。また、病態モデルとして、抗てんかん薬などCNS関連の医薬品開発での薬物のスクリーニングにも用いることができます。
    • SynFire Co-Culture Kit の2種類のニューロン細胞はダイレクトリプログラミングにより作製されているため、①純度が高いこと、②シナプスでの発火が同期した神経ネットワークを約4週間で構築できることが特徴です。

    SynFire Co-Culture Kitの具体的な使用例について紹介してください。

    • SynFire Co-Culture Kit を用いてMaestro MEA System (Axion Biosystem社)の48 ウェルMEAプレートで共培養すると、4週間で、シナプスでのバースト発火(自発的な脱分極によるスパイクの発生)が同期した神経回路網を調製できます。同期した神経回路網に、GABAのブロッカーであるBicuculline、Picrotoxin を加えると、抑制が抑えられバースト発火頻度が増加することが確認できています。また同期した神経回路網を用いて、抗てんかん薬のスクリーニングを行うこともできています。抗てんかん薬として承認されたPhenytoin、Lamotorigine、Carbamazepine、Ganaxolone は、Picrotoxin(PTX) によるバースト発火頻度(平均発火頻度)の増加を減少させることが確認できています。
    • NeuCyte 社のウェブサイト(https://www.neucytelabs.com/resources)にSynFire Co-Culture Kit を使用したポスターやウェビナーが多数アップされています。是非ご覧ください。

    Synfire Co-Culture Kitを使っている日本の研究者はいらっしゃいますか?

    • 東北工業大学大学院工学研究科の鈴木郁郎先生の研究室で使っていただいております。同研究室では、AXION Biosystems社のMaestro Proシステムを用いて、3種の痙攣陽性化合物によりSynfire Co-Culture Kit の評価を行っています。その結果、培養4週目で同期バースト発火が得られ、痙攣陽性化合物の添加による発火頻度の増加が確認できています。また用量依存的な発火パターンの変化から、作用機序の異なる3種の化合物のクラスタリングにも成功しています。詳しくは、鈴木先生が書かれたサイエンスレターを参照ください。
    • 本年6月末に開催された第47回日本毒性学会年会で、鈴木先生らはアステラス製薬(株)安全性研究所と共同で、「薬理作用から痙攣リスクを直接示唆しない化合物に対する in vitro MEAシステムを用いた痙攣リスク評価」の演題で、Synfire Co-culture Kitを用いた研究結果をポスター発表されています。
    ライター:AS ONE International Inc.の技術アドバイザー
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