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Neucyte synfire ニューロンを用いたMEA計測

2020年10月5日
本記事は、東北工業大学 大学院工学研究科 電子工学専攻 准教授 鈴木郁郎様にご執筆頂いたものです。

1.はじめに

前臨床試験における医薬品の神経毒性評価および探索段階における薬効評価において、神経ネットワークの機能を指標とした動物実験を代替できる精度の高いin vitro評価系の構築が求められている。ヒトiPS細胞由来ニューロンはヒトへの外挿性を担保できる可能性および動物実験廃止の流れからin vitroの評価サンプルとしての利用が期待されている(1-4)。神経ネットワークの電気活動を非侵襲高時間分解能計測できる微小電極アレイ(microelectrode array; MEA)を用いた、Neucyte Synfireニューロンにおける痙攣陽性化合物に対する反応の一部を紹介する。

2.方法及び材料

Glutamatergic induced neurons(1001-7.5, Neucyte,Inc), GABAergic induced neurons(1002-3.5, Neucyte,Inc)およびAstroglia (1003-1, Neucyte,Inc)を7:3:3.5で混合し、8.0×105 cells/cm2の細胞密度でMEA(M768-tMEA-48B, AXION Biosystems)上に播種後,37℃,CO2インキュベータ下で培養した.培養4週目以降にMEA計測システム(Maestro Pro, AXION Biosystems)を用いて自発活動を記録した。痙攣陽性化合物として、K+チャンネルの阻害剤である4-Aminopyridine (4-AP),GABAA受容体のブロッカーであるPicrotoxin,ムスカリン受容体のアゴニストであるPilocarpineを5用量投与し,各用量10分間の自発活動を記録した。

3.結果

【培養と自発活動】
培養4週目には、シナプス伝達を介した同期バースト発火が観察された。同期バースト発火は、神経ネットワークの機能的成熟化の指標の一つであり、Neucyte Synfireニューロンは、他のヒトiPS細胞由来ニューロンに比べ、早期に成熟化する特徴を有していると言える。図1(A)は、MEA上で培養した86日目の免疫染色画像である。ニューロンが突起を伸長させ、アストロサイトと共に密にネットワークを形成している様子が認められた。図1(B)は、MEAで得られた自発活動波形と4-Aminopyridine(4-AP) 30 µM投与時の自発活動波形を示している。同期バースト発火以外にトーニックな発火が多く見られる特徴を有する。4-AP特有の同期バースト発火数の増加が認められたことから、機能的にワークしていることが認められる。
図1 Neucyte SynFireニューロンの培養写真と自発活動波形
(A)培養86日目の免疫染色画像。緑:β-TubulinⅢ。赤:GFAP。青:Hoechest33258。(B) MEAで取得された自発活動波形と4-AP 30μM投与による活動変化。
【痙攣陽性化合物に対する応答】
作用機序が異なる痙攣陽性化合物3化合物(4-AP, Picrotoxin, Pilocarpine)を投与した結果、発火数、同期バースト発火数の増大が認められた。図2は、それぞれVehicleと30µM投与時のラスタープロットと発火数のヒストグラムを示している。いずれの化合物も同期バースト発火の上昇が認められ、特に4-APとPicrotoxinは顕著に増加している様子が観察された。痙攣陽性化合物に対して、顕著な応答を示すニューロンであることを示している。
図2 痙攣陽性化合物投与による活動の変化4-AP 30μM、Picrotoxin 30μM、 Pilocarpine 30μM投与前後のラスタープロットと発火数のヒストグラム(spikes/ms)。
【作用機序別の応答】
図3(A)は、3化合物の用量依存的な変化を9つのパラメータで解析したヒートマップを示している。用量依存的に発火数や同期バースト発火数が増加していることがわかる。9つのパラメータを使用したクラスタリング解析の結果を図3(B)に示す。多変量解析を行うと、薬剤毎にクラスターが分かれたことから、Neucyte Synfireニューロンは、薬剤の作用を反映した応答をしていることがわかる。作用機序別の応答が検出できることは、安全性評価におけるメカニズム推定や薬効評価に有効である。
図3 9パラメータの解析とクラスタリング解析
(A)9つのパラメータの解析結果をヒートマップで示している。Vehicle(DMSO0.1)のデータを100%として、各解析パラメータの増減を用量毎に色で表している。
(B)3薬剤各用量におけるクラスタリング解析の結果であり、薬剤毎に特徴的な反応をしていることがわかる。

4.結論

Neucyte Synfireニューロンは、培養4週目でシナプス伝達を介した同期バースト発火が観察され、各種チャネルに対する薬剤応答の検出、および作用機序の違いを検出できる為、早期に薬効試験や安全性試験を可能とするヒトiPS細胞由来ニューロンと言える。

参考文献
(1) Odawara, A., Katoh, H., Matsuda N., and Suzuki, I., Physiological maturation and drug responses of human induced pluripotent stem cell-derived cortical neuronal networks in long-term culture,Scientific Reports, 6, 26181, 1-14, 2016

(2) A. Odawara, N. Matsuda, Y. Ishibashi, R. Yokoi & I. Suzuki. Toxicological evaluation of convulsant and anticonvulsant drugs in human induced pluripotent stem cell-derived cortical neuronal networks using an MEA system, Scientific Reports, 8, 10416, 2018

(3) R. Yokoi, M. Okabe, N. Matsuda, A. Odawara, A. Karashima, I. Suzuki, Impact of Sleep–Wake-Associated Neuromodulators and Repetitive Low-Frequency Stimulation on Human iPSC-Derived Neurons, Frontiers in Neuroscience, 13:554, 1-15, 2019

(4) T. Shirakawa, I. Suzuki, Approach to Neurotoxicity using Human iPSC Neurons: Consortium for Safety Assessment using Human iPS Cells, Curr Pharm Biotechnol., 10.2174/1389201020666191129103730, 780-786, 2020

参考機器

(A)Maestro Pro, AXION Biosystems
(B)MEA plate, AXION Biosystems
*Maestro製品は弊社取扱いをしておりませんが、ご購入をご希望のお客様には窓口をご紹介致します。
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