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Kirkstall社と同社の技術・製品

2021年1月25日
本コーナーでは、アズワン(株)が販売している商品について、コンセプトや技術的な背景を中心に、できるだけ分かり易く説明したいと考えています。第5回は、最近販売を始めたKirkstall 社のQuasi-Vivo を紹介します。

Kirkstall 社はどんな会社ですか?

  • 2006年に設立された、英国のシェフィールドにあるバイオベンチャー企業です。ライフサイエンス研究に用いられるフロー型の細胞培養システムであるQuasi-Vivo を開発、販売しています。Quasi-Vivo は、イタリアのピサ大学で開発されたMulti Chamber modular Bioreactor (MCmB) を基に商品化されたものです。

Quasi-Vivo はどういったものですか?

  • ヒト等の細胞を組織から分離し、生体外(in vitro)で培養する細胞培養技術は、現在のライフサイエンス研究には必須のものとなっています。下表は、これまでに開発された主な細胞培養技術をまとめたものです。生体内にできるだけ近い生理的条件下で細胞を培養する技術開発が進められています。

    主な細胞培養技術

    2D Static Culture(2D 静置培養)
    3D Static Culture(3D 静置培養)
    Perfusion Culture(灌流培養)
    Co-Culture(接触型及び非接触型共培養)
    Organ(s)-on-a-chip
  • ラテン語で、Quasiは「疑似」、Vivo は「生体」を意味します。Quasi-Vivoは、生体を模倣したフロー型細胞培養システム(灌流培養システム)であり、生体と似た生理的条件下での細胞培養が行えます。
  • Quasi-Vivo は、細胞培養を行うチャンバー、培養液のリザーバーボトル、コネクターやチューブ、チャンバーやリザーバーボトルを固定するトレイなどからなります。市販のペリスタポンプを用いることにより、培養液を循環させ、灌流培養(Perfusion Culture)を行うことができます。コネクター及びチューブを用いて、複数のチャンバーを連結した細胞培養を行うことも可能です。
  • Quasi-Vivo には、3種類のチャンバーがあります。1つは、深部培養(Submerged Culture)を行うためチャンバーです(QV500)。もう1つは、トランスウェル等のインサートを挿入した培養ができるチャンバーです。インサートの上下で、液相/液相の培養ができる チャンバー(QV600 L/L)と、気相/液層の培養ができるチャンバー(QV600 A/L) があります。前者は、脳血液関門や腸、腎臓、後者は、皮膚、肺等の臓器モデルの構築に使用できます。最後の1つは、トレイ型のチャンバーです(QV900)。QV500、QV600 L/L、QV600 A/L のチャンバーはシリコン(PDMS)製ですが、QV900 のチャンバーはアクリル製です。QV900 のチャンバーのふたは透明なので、細胞観察が可能です。

Quasi-Vivo の特徴は何ですか?

  • Quasi-Vivo はシンプルで、フレキシブルな灌流細胞培養システムです。初代培養細胞やスフェロイド、オルガノイドを用いて、肝臓、腎臓、腸、脳血液関門、心臓、肺、皮膚等の臓器モデル(Organ-on-a-chip)を作ることができます。また複数のチャンバーをコネクターで接続することにより、複数の臓器が連結したモデル(Multi Organs-on-a-chip)を作製することもできます。
  • グラスゴー大学の Sean McGinty らは、QV900 チャンバー内の溶存酸素量とシェアストレス分布のシミュレーションを行っています(DOI: 10.1098/rsfs.2019.0045)。

Quasi-Vivo を用いた論文はありますか?

  • Quasi-Vivo は英国を中心に、欧米の70以上の大学の研究室で使用されています。これまでに20 以上のQuasi-Vivo を用いた論文が発表されています。臓器別に、最近発表された幾つかの論文を紹介します。

●肝臓

  • エジンバラ大学の David C. Hay らは、ES細胞由来のHepatocyte-like cells(HLCs) のQuasi-Vivo での灌流培養を行い、薬物代謝酵素活性を静置培養と比較しています。灌流培養では、Cyp1A2 の活性は約5倍、Cyp2D6 は約9倍、静置培養に比べ向上した結果が得られています(DOI: 10.1007/s00204-016-1689- 8)。
  • ロンザ社の Magdalene Stosik らは、Quasi-Vivo を用いてヒト初代肝細胞の培養を行っています。灌流培養した場合は、静置培養に比べ、Cyp3A4、Cyp1A2、Cyp2B6 のベースの活性が向上した結果が得られています。またQuasi-Vivo での灌流培養では、静置培養に比べ培地の交換回数を大幅に減らすことができることから、代謝産物の長期毒性試験での利用の可能性が示唆されています(DOI: 10.1089/aivt.2018.0009)。
  • リバプール大学の Parveen Sharma らは、Quasi-Vivo でラットの初代肝細胞を培養しています。培養する位置を変えて灌流培養することにより、ゾーン特異性を有する肝細胞の作製に成功しています。(DOI: 10.3389/fbioe.2019.00017)。

●脳および脳血液関門

  • ルクセンブルク大学のJens C. Schwamborn らは、Quasi-Vivo を用いた灌流培養により、ヒトiPS細胞由来の神経上皮幹細胞から中脳オルガノイド(hMO)を作製しています。従来の振盪培養に比べ、中脳オルガノイド中の壊死細胞の割合が減少し、ドーパミン作動性細胞の割合が増大することを報告しています (DOI: 10.1039/c8lc00206a)。
  • アストン大学の Raj K. S. Badhan らは、豚脳の微少血管内皮細胞(PBMEC)をQuasi-Vivo を用いて、液相/液相での灌流培養を行うことにより、脳血液関門モデルを作製しています。灌流培養を行うことにより、静置培養に比べ、バリア機能が向上した脳血液関門モデルを作製できています(DOI: 10.1038/s41598-020-60689-w)。
  • リード大学の Sikha Saha らは、ヒト脳血液関門を構成する3種類の細胞、血管内皮 細胞(HBECs)、ペリサイト(HBVPs)、アストロサイト(HAs)をそれぞれ異なるチャンバーで連結して灌流培養を行い、アミロイドβペプチドの細胞毒性試験を行っています(DOI: 10.1038/s41598-018-26480-8)。

●肺

  • インスブルック医科大学の D. Wilflingseder らは、気管支及び末梢気道上皮細胞のQuasi-Vivo を用いた気相/液相の灌流培養を行っています。灌流培養により、毛様体形成や粘液生成能が高まり、バリア機能の向上した肺モデルが作製できています(DOI: 10.1038/s41598-017-11271-4)。

癌オルガノイド

  • ウェストミンスター大学の Miriam V. Dwek らは、乳癌オルガノイドのQuasi-Vivo  を用いた灌流培養を行っています。灌流培養では、静置培養に比べ、乳癌オルガノイドのサイズが減少し、抗がん剤であるドキソルビシンに対する耐性が増大することを報告しています(DOI: 10.1038/s41598-020-68999-9)。
ライター:AS ONE International Inc.の技術アドバイザー
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