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ID Solutions社と同社の技術・製品

2021年3月8日
本コーナーでは、アズワン(株)が販売している商品について、コンセプトや技術的な背景を中心に、できるだけ分かり易く説明したいと考えています。第7回は、最近販売を開始した Id-Solutions 社の商品について紹介します。

    Id-Solutions 社はどんな会社でしょうか?

  • フランス南部、モンペリエ近郊のグラベルにあるバイオベンチャー企業です。血液からの Circulating cell-free DNA (cf-DNA) や組織切片からのDNAの抽出試薬、及びデジタルPCR装置で用いる癌遺伝子検査試薬の開発・販売を行っています。

Circulating cell-free DNA (cf-DNA) とはどういったものでしょうか?

  • 血液等の体液中にあるDNA断片 のことをいいます。血液中には、アポトーシスやネクローシスにより死滅した細胞から放出された、180-200塩基対を中心としたサイズのDNA 断片が循環しています。癌患者の場合は、そこに癌細胞由来のDNA 断片(Circulating tumor DNA、ct-DNA)が混入していることが知られています。

PCRとは?

  • 新型コロナ感染症に関する報道により、PCRは一般人が最も知っている専門用語のひとつになったと思います。PCRは、Polymerase Chain Reaction の略語であり、DNA ポリメラーゼという酵素を用いて、サーマルサイクラーでの加熱、冷却の温度サイクルの繰り返しにより、遺伝子をネズミ算的に増幅する方法です。
  • 1983年に米国で基本的な原理が発表されて以来、PCRを用いた数多くのアプリケーションが開発され、今日の分子生物学研究の進展に寄与してきました。PCRを用いた代表的な遺伝子定量法として、リアルタイムPCRとデジタルPCRがあります。

リアルタイムPCRとは?

  • リアルタイムPCR装置を用いて、PCRでの遺伝子増幅過程を経時的に追跡することにより、検体中の遺伝子量を測定する方法です。増幅産物の量は、SYBR Green 等のインターカレーター、あるいはTaqManプローブ等の蛍光色素標識オリゴヌクレオチドプローブを用いて、蛍光強度を測定することにより行います。既知量の遺伝子を用いて作成した検量線を用いて、検体中の目的遺伝子量を測定します。
  • 新型コロナウイルスに感染しているかどうかの検査は、現在は主にリアルタイムPCRにより実施されています。

デジタルPCRとは?

  • デジタルPCR装置を用いて、目的遺伝子が一個以下になるまで、希釈、分画してPCRを行うことにより、検体中の目的遺伝子の絶対量を測定します。デジタルPCRでは、リアルタイムPCRとは異なり、検量線の作成は不要です。リアルタイムPCRと比べると、測定できる濃度範囲は狭くなりますが、微量な遺伝子の正確な定量ができます。
  • リアルタイムPCRと同様に、異なる蛍光色素で標識された複数のオリゴヌクレオチドプローブを用いれば、複数の遺伝子の分別定量もできます。例えば、血液中のcf-DNA中の癌遺伝子について、変異型と正常型の割合(MAF:Mutation Allele Frequency)を知ることができます。
  • デジタルPCRには、エマルジョン化したドロップレットでPCRを行う方法(STILLA社:NaicaTM Crystal Digital PCR System、BIO-RAD社:QX200TM Droplet Digital PCR System)と、マイクロウェルでPCRを行う方法(Thermo Fischer Scientific社:QuantStudioTM Digital PCR System)があります。リアルタイムでの蛍光計測は行わず、PCR終了後、各ドロップレットまたは各ウェルチップでの蛍光シグナルの有無で定量します。

Id-Solutions 社の商品と特徴を教えてください。

  • Id-Solutions 社には、IDXTRACT、IDQUANT、IDQUANTFY の3つの商品群があります。
  • IDXTRACT は、血液から シリカカラムを用いてcf-DNA を抽出する試薬です。磁性シリカビーズを用いた IDXTRACT-MAG もあります。IDXTRACT には、コンポーネントのひとつとして、Internal Control of Extraction(ICE) が添付されています。一定量のICEを検体に添加することにより 、抽出ステップでの回収率を知ることができます。
  • IDQUANT は、上述の添加したICE及び抽出したcf-DNA を定量するための試薬です。STILLA社のNaicaTM Crystal Digital PCR System、BIO-RAD社のQX200TM Droplet Digital PCR System 、及び通常のQPCR System に適用可能な3種類の品揃えがあります。ICEの回収率を考慮することで、抽出ステップでの変動を踏まえた正確な結果の判断ができます。下図を参照ください。
  • IDENTIFYは、IDXTRACT により取得したcf-DNA 中の癌遺伝子について、変異型と正常型の割合(MAF)をドロップレットデジタルPCR(ddPCR)装置で測定するための試薬です。代表的な癌遺伝子である EGFR、NRAS、KRAS、BRAF、PIK3CA など10種類の品揃えがあります。複数のTaqManプローブを組み合わせることにより、検体中の変異型と正常型の癌遺伝子の割合(MAF)を知ることができます。NaicaTM Crystal Digital PCR System及びQX200TM Droplet Digital PCR System に適用可能な試薬がそれぞれあります。

デジタルPCRは今後どのようなことに使われるでしょうか?

  • 血液等のリキッドバイオプシー採取は、外科手術や内視鏡での生体組織採取に比べ侵襲性が低いことから、癌をはじめとした種々の疾患の診断への利用が期待されています。外科手術や内視鏡で採取した生体組織の癌遺伝子変異検査(MAF 数%以上)には、次世代シーケンサー(NGS)が主に用いられています。しかしながら血液中のcf-DNAの検査では、変異遺伝子の割合は非常に低く(MAF 数%以下)、微量遺伝子の正確な定量ができるデジタルPCRが適していると考えられます。
  • 現在大学病院等での臨床研究で、癌患者の術後の経過観察や治療効果を把握するための検査法として、癌患者の血液から採取したcf-DNA の癌遺伝子変異検査が検討されています。デジタルPCRでの癌遺伝子変異検査が、CA19-9 やCEA検査に代わる新たな腫瘍マーカー検査になる可能性があります。
ライター:AS ONE International Inc.の技術アドバイザー
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