アズワンのAXELショップ > 試薬 > AmoyDx社と同社の技術・製品

AmoyDx社と同社の技術・製品

2021年7月26日
本コーナーでは、アズワン(株)が販売している商品について、コンセプトや技術的な背景を中心に、できるだけ分かり易く説明したいと考えています。第10回は、最近販売を始めたAmoyDx社の商品について紹介します。

    AmoyDx社はどのような会社ですか?

  • 2008年に設立された中国福建省厦門(アモイ)市にあるバイオベンチャー企業です。癌遺伝子診断薬(IVD)や癌遺伝子研究に用いる試薬(RUO)の開発、販売を行っています。同社は、2017年に深圳証券取引所に上場しています。
  • 同社は、AstraZeneca社、Johnson & Johnson社、Merck社、Pfizer社といったグローバル大手製薬企業と連携したコンパニオン診断薬開発を行っています。
  • 癌遺伝子診断薬として、20種類以上のコンパニオン診断薬が中国及び欧州で承認されています。日本ではAmoyDx ROS1融合遺伝子検査薬が、体外診断用医薬品として承認されています(保険点数2,500点)。これはPfizer社の肺癌治療薬であるクリゾチニブ(商品名:ザーコリ)のコンパニオン診断薬です。

コンパニオン診断薬とはどういったものでしょうか?

  • 近年の分子生物学の進展により、発癌の分子メカニズム解明が進み、そのメカニズムに対応した治療薬開発が進められています。発癌に関与するタンパク質分子の働きを阻害して癌治療を行う薬剤を分子標的薬といい、その分子標的薬が有効かどうかを調べる検査薬をコンパニオン診断薬といいます。
  • 癌治療を目的とした分子標的薬には、リン酸化の働きを阻害するキナーゼ阻害剤等の低分子化合物とモノクローナル抗体があります。リウマチ等の癌以外の疾病の治療薬も含め、日本では120種類以上の分子標的薬が承認されています(2020年11月時点)。
  • 我々の細胞は、サイトカイン、ケモカイン、増殖因子といった情報伝達物質を用いて、細胞間で情報を伝達しています。情報は、情報伝達物質が細胞表層にある受容体(レセプター)に結合した後、細胞内情報伝達システムにより核内の遺伝子に伝達されます。
  • 細胞の増殖は、EGF(Epidermal Growth Factor:上皮細胞増殖因子)等の細胞増殖因子が、細胞表層のレセプター(EGFR)に結合して始まります。増殖因子が結合したリセプターは二量体化、リン酸化し、下流にある、RAS、RAF、MEK、ERKといったタンパク質が順にリン酸化されます。最終的にリン酸化したERKにより活性化した転写因子(TF)が細胞増殖に必要な遺伝子を発現させ、細胞は増殖します(下図)。これをERK情報伝達システムといいます。RASタンパク質には、KRAS、HRAS、NRAS、RAFタンパク質には、ARAF、BRAF、CRAFがあります。
  • 癌細胞では、ERK情報伝達システム中のどれかのタンパク質をコードする遺伝子に変異(ドライバー変異)が生じていることがあります。これにより、増殖因子が結合しなくても常に増殖オンの状態になっています。そこで遺伝子変異により生じた異常なタンパク質の働きを抑え、癌細胞の増殖を阻害することにより癌治療を行う分子標的薬が開発されています。
  • ERK情報伝達システムでは、EGFR、BRAF遺伝子のドライバー変異が多いことから、それに対する分子標的薬が開発されています。EGFR変異治療薬として、ゲフィチニブ(商品名:イレッサ)、オシメルチニブ(商品名:タグリッソ)、BRAF変異治療薬として、ベムラフェニブ(商品名:セルボラフ)、ダブラフェニブ(商品名:タフィンラー)等があります。
  • 患者から採取した癌組織の遺伝子を調べることにより、どのタンパク質の遺伝子にどのような変異が生じているか分かります。遺伝子変異には、置換、挿入、欠失、融合、増幅等があります。変異している遺伝子に関する情報が得られれば、どの分子標的薬が有効かを知ることができます。例えば、BRAF遺伝子に変異を持つ患者にEGFR変異治療薬であるイレッサやタグリッソを処方しても効果はありません。

癌遺伝子パネル検査について教えてください。

  • 個々の癌遺伝子のドライバー変異は、PCRにより検査することができます。しかしながら、上述したERK情報伝達システム以外にもドライバー変異をもたらす癌遺伝子は多数あり、これをそれぞれPCRで検査するには非常に手間がかかります。
  • 癌遺伝子パネル検査は、次世代シーケンサー(NGS)を用いて、数多くの癌遺伝子や癌抑制遺伝子の変異を一度に調べる検査のことを言います。日本では、癌遺伝子パネル検査として、OncoGuide NCCオンコパネルシステム(シスメックス社)とFoundationOne CDx がんゲノムプロファイル(中外製薬社)が、2019年6月に体外診断用医薬品として承認されました(保険点数56,000点)。前者では114、後者では324個の癌遺伝子や癌抑制遺伝子の変異を一度に調べることができます。

AmoyDx社の商品と特徴について教えてください。

  • 同社の癌遺伝子検査薬には、リアルタイムPCR機器に対応した商品とNGS機器に対応した商品があります。同社の独自技術として、ADx-ARMS、Super-ARMS、HANDLE、ddCAPがあり、ADx-ARMS、Super-ARMSはリアルタイムPCR機器、HANDLE、ddCAPはNGS 機器での癌遺伝子検査に用いる技術です。以下順に説明します。

ADx-ARMSとSuper-ARMS

  • リアルタイムPCRにより癌遺伝子のドライバー変異を調べる、24種類の検査薬の品揃えがあります。変異遺伝子の存在は、蛍光標識されたプローブにより検出します(ADx-ARMS技術、下図)。商品のひとつのMulti-Gene Mutations Detection Kitでは、9個の癌遺伝子の118のドライバー変異を検出することができます。Pan Lung Cancer PCR Panelでは、肺癌に関連した11個の癌遺伝子の167のドライバー変異を検出できます。ドライバー変異が特定できれば、有効な分子標的薬を選択できます。
  • Super-ARMSは、ADx-ARMSのキット組成をマイナーチェンジした技術であり、変異遺伝子の割合が低い、リキッドバイオプシーでの遺伝子検査に適しています。

HANDLE

  • HANDLE( Halo-shape ANnealing and Defer-Ligation Enrichment)は、発癌に関与する遺伝子のドライバー変異のある領域だけをNGSでシーケンスする技術です。シーケンスする領域の上流と下流の2か所にハイブリする一本のプライマーを用います。ハイブリダイゼーション後、DNAポリメラーゼとDNAリガーゼにより環状化し、残存する直鎖状DNAをエキソヌクレアーゼで消去します。残った環状DNAをPCRし、NGS でシーケンスします(下図)。置換、欠失、挿入、融合、増幅等のいずれの遺伝子変異も検出することができます。5種類の品揃えがあります。
  • 商品のひとつのHANDLE Classic NGS Panelは、現在治療薬があるかまたは開発中の40個の癌遺伝子のドライバー変異について、一度に検査することができます。またHRD Focus Panelでは、二重鎖相同組換え修復に関与するBRCA1、BRCA2遺伝子の変異を調べることができます。これにより、ポリADPリボースポリメラーゼ(PARP)阻害剤であるオラパリブ(商品名:リムパーザ)が有効かどうかを判断することができます。

ddCAP

  • ddCAP(dual direction and digital capture)もHANDLEと同じく、発癌に関与する遺伝子のドライバー変異のある領域だけをNGSでシーケンスする技術です。DNA断片をPCRで増幅後、発癌に関与する遺伝子領域の断片だけを捕捉プローブ固定磁性ビーズで回収し、NGSでシーケンスし、変異を検出します。センス、アンチセンスの両側のDNA鎖に順にハイブリダイズする捕捉プローブを用いる点が従来技術と異なります。またダブルのUnique Molecular Identifier(UMI)を用いることで、PCRエラーの割合を大幅に下げることができます(下図参照)。
  • AmoyDx Essential NGS Panelは、10の癌遺伝子(EGFR、ALK、ROS1、RET、KRAS、NRAS、PIK3CA、BRAF、HER2、MET)のドライバー変異を検査することができます。ddCAPの方がHANDLEより検出感度が高く、変異遺伝子の割合が少ないリキッドバイオプシーでの使用も可能です

  • ddCAP Technology Workflow
ライター:AS ONE International Inc.の技術アドバイザー
facebook twitter instagram

AXEL(アクセル)ショップは、研究用の科学機器、消耗品から工場MRO、介護用品・医療用品のすべてが揃う、総合検索サイト・WEBショップです。