衛生検査と食中毒菌

生物的危害を分析・予測して対策を

生物的危害を分析・予測して対策を / 衛生指標菌と食中毒菌の関係 / 主な食中毒菌 / ウイルス性食中毒 ~ノロウィルス~
食品は製造・加工・流通・消費まで全ての段階において、清潔で衛生的に扱われ、かつ適正な温度管理を受けなければなりません。
食品の危害防止や品質管理において、微生物は大きなウェイトを占めます。
食品の微生物汚染の要因は微生物の「付着」「混入」「増殖」です。
実際はそれらが複合的に発生し、大きなトラブルとなります。
微生物汚染を抑えるためには「初期菌数の低減」「二次汚染の防止」「交差汚染の防止」「適正な温度条件」による適切な微生物管理を行なう必要があります。
微生物汚染のひとつの判断材料として「衛生指標菌の検査」があります。
食品中やフードチェーンの環境における微生物の状況を「衛生指標菌」と呼ばれる、一般生菌数、大腸菌、大腸菌群等の食中毒菌と密接な関係にある微生物を検査することで、品質評価、安全性評価の指標とすることができます。
原材料別、加工工程別、ロット別、工場別、季節別などで「衛生指標菌」のデータを蓄積し、増減の傾向を分析・把握することにより、危害を予測し対策を行うことが重要です。
これらは比較的検査手法も容易で、検査が初めての方でも無理なく検査導入することができます。
一般の食品工場における自主検査として「衛生指標菌の検査」を強化・迅速化し汚染データの分析や汚染原因の究明・危害予測を行って、タイムリーに現場へフィードバックすることが重要です。
食品微生物検査を取り巻く公定法、標準試験法、簡易試験法
食品衛生検査指針に基づいた微生物検査法を基本に、公定法、およびそれに準じる標準試験法があります。
これらの試験の結果は、行政判断の根拠として使用されます。

衛生指標菌と食中毒菌の関係

生物的危害を分析・予測して対策を / 衛生指標菌と食中毒菌の関係 / 主な食中毒菌 / ウイルス性食中毒 ~ノロウィルス~
食中毒の関係イメージ

一般生菌数

標準寒天で35±1℃で、48±3時間培養後、発育する中温性・好気性細菌。
一般生菌数の多少は食品全般の衛生的な取扱いの指標となり、一般生菌数が多いと食中毒のリスクも高くなる。

大腸菌群

グラム陰性の無芽胞桿菌で、乳糖を分解してガスと酸を産生する、好気性もしくは通性嫌気性の細菌。
大腸菌をはじめ、多くの腸内細菌科が含まれる。
加熱処理済食品からの大腸菌群の検出は加熱不足や二次汚染等を示し、未加熱食品であっても大量に検出された場合は非衛生的な扱いを受けたことを示す。

大腸菌

食品衛生法では非加熱・包装後加熱食肉製品、魚肉練り製品、生食用カキ、加熱後摂取冷凍食品などでE.coliの成分規格が定められている。
腸管出血性大腸菌なども含まれる。
動物の糞便に生存する確率が高く、自然界では死滅しやすいため、E.coliが検出された食品は、糞便汚染など、大腸菌群が検出された場合よりも一層非衛生的な取扱いを受けた可能性、さらには、腸管系病原菌の汚染の可能性が高いことを示す。

主な食中毒菌

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菌 種 形 態 好気/
嫌気
グラム陽性/
陰性
よく発生する食品・感染源 特 徴






桿菌
桿菌
通性
嫌気性
- 畜肉、魚、鶏肉など生の食品や鰻、レバー刺身、卵焼き、ローストチキンなどの水産・畜産加工食品に多く見られる。
にわとり
乾燥に強く、10~1000個、ときには10個以下の少ない菌数でも発生の可能性がある。
比較的酸に強い。
75℃、1分間の加熱で死滅する。





桿菌
桿菌
通性
嫌気性
- 魚介類の刺身や寿司が感染源となる。
生の魚介類を調理した後の調理器具や手指等から汚染される。
魚と貝
好塩性(2~3%)で増殖が極めて早く、良好な条件では、2時間で1個の細菌が約4000個まで増殖可能。
真水に弱く、加熱・酸にも弱い。







桿菌
桿菌
通性
嫌気性
- 家畜や感染者の腸管内などに存在するため、主に非加熱食肉の摂取や二次汚染食材によって感染する。
羊、牛、ヤギ
O157、O26に代表されるベロ毒素を産出する大腸菌。
100個、ときには10個程度の菌数でも発症し、重症にいたる場合がある。
比較的酸に強い。
75℃、1分間の加熱で死滅する。







らせん状
桿菌
らせん状桿菌
微好気性 - 家畜・家禽などの腸管内に存在し、主に鶏肉や牛のレバーに多く見られる。
レバー、にわとり
100個程度の菌数でも発症する。
酸素濃度の低い環境を好み、大気中では死滅する。
30℃以下では増殖しないが、低温にも耐える。
加熱には弱い。






球菌
球菌
通性
嫌気性
+ 人の化膿した傷、皮膚、おでき、ニキビ、喉や鼻の穴、毛髪などに常在している。
また、適正な保管温度を超えたおにぎり、弁当などから検出されることが多い。
おにぎり、お弁当
耐乾・耐塩性があり、酸・アルカリにも強い。
増殖時には、耐熱性のエンテロトキシンという毒素を生産する。




桿菌
桿菌
通性
嫌気性
+ 家畜や家禽などの腸管内に存在し、乳製品や食肉加工品などから感染します。
チーズと、ハム
酸素が無い状態で、0℃でも増殖することができ、6%程度の塩分・酸にも比較的強い。
加熱には弱い。
妊婦や病人・高齢者・乳児や免疫機能の低い人は感染に注意。
※通性嫌気性・・・酸素の有無に関わらず増殖する。しかし酸素がある場合には増殖率が圧倒的に早くなる。
※微好気性 ・・・微量の酸素(5%程度)がある状態でのみ増殖する。

ウイルス性食中毒 ~ノロウィルス~

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主な感染源

10~100個程度のウイルス数で発症します。
カキを始めとした二枚貝が主な感染源で、生食食品や加熱不十分な食品、調理従事者などの手を経て二次感染したり、ノロウイルスに感染した人の糞便・汚物にも含まれていますので、食品を二次汚染し、被害が拡大するケースが多発しています。
吐物や汚物の処理には手袋・マスク・エプロンなどすべてディスポタイプを着用し、十分な注意が必要となります。

検査方法

ノロウィルスは食中毒菌とは異なり、培養ができません。
RT-PCR、イライザ法での検査となります。

感染予防

ノロウィルスを失活させるには「中心温度85~90℃、90秒間以上」の加熱か「塩素濃度200ppm」での次亜塩素酸ナトリウム消毒が有効です。

集団感染が多く、風邪に似た症状も

集団感染しやすいのが特徴で、感染から発症まで2~3日です。
主症状である嘔吐と下痢のほか頭痛、発熱、のどの痛みなどの症状がでることもあり、風邪と間違われることもあります。
普通、発症してから3日以内に治ります。